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【ごとほりリポート】自然と調和した人の営みにあふれるまち・三重県いなべ市

ご当地ほりにし甲子園に参加する自治体にフォーカスする「ごとほりリポート」。

各地域が持つ資源をどう活用し、ご当地ほりにし甲子園へ向けて進んでいるのか、直接現場に行って取材してきました。

第2回目は三重県いなべ市です。いなべ市の今を切り取ってご紹介します。

なんとご当地ほりにし発祥のまちだった!?

三重県の最北端に位置するいなべ市。北に養老山地、西に鈴鹿山脈がそびえ、その麓にのどかな田園風景が広がっています。名古屋から車で1時間足らずとアクセスも良好。街中からはいなべ市の象徴ともいえる藤原岳をはじめ、雄大な鈴鹿の山並みを望むことができます。

実はいなべ市はご当地ほりにし誕生の地でもあります。ほりにし初の地域限定ラベルとして、2022年9月に藤原岳をあしらったパッケージが生まれました。そこから同様の取り組みが全国各地に続々と広がり、現在、全国42の都道府県による個性豊かなご当地ほりにしが発売されています。

今回、いなべ市で話を伺ったのは、移住支援やまちづくりに取り組む一般社団法人グリーンクリエイティブいなべの新規事業開発マネジャー・井上優一さん。ご当地ほりにし発売から2年以上が経過し、「地元ではみんな知ってるお馴染みのデザインになっています。もちろんほりにし甲子園もやる気満々ですよ」と語ります。

自然と文化を発信するにぎわいの拠点

いなべ市で注目のスポットとしてまず挙げられるのが、同社が運営するまちづくりの拠点「にぎわいの森」。令和元年、新しい時代の幕開けと共に市役所のすぐ隣にオープンしました。敷地内には市内外のテナントが複数点在しており、森の中を散策するようにぶらりと巡ることができるのが魅力です。

無添加のホットドッグや行列のできるベーカリー、いなべ市の特産品を集めたセレクトショップなど見どころ満載。井上さんは「平日は市民の憩いの場として、休日は県外客が観光をかねてたくさん来られます。誰でも気軽に立ち寄れるカジュアルなスポットとして定着しつつあります」と話します。

地元企業から移住者まで、総ぐるみのまちづくり

にぎわいの森がオープンして以降、地域に活気をもたらす取り組みが続々と生まれているいなべ市。その勢いを加速させているのは行政はもちろんのこと、地元企業や移住者たちの「自分たちのまちを盛り上げていこう」という熱い思いにあります。

いなべ市は自動車部品の製造が盛んな地域。その一つであるフジ技研は、地元で唯一の養鶏事業を事業継承したというから驚きです。その卵というのがこちらの「いっちゃんたまご」。地元産の米やトウモロコシを配合した飼料で育てられ、レモンイエローの黄身とぷっくり弾力ある白身が特徴です。

自動車部品を製造する会社と養鶏が一体どのように結びついたのでしょうか?実は、いっちゃんたまごは設備の老朽化や担い手不足で廃業の危機に直面していたんだそう。そこで同社が事業を引き継ぎ、長年にわたり地元で愛されていた卵を作り続けることになりました。こだわりの製法はそのままに、養鶏設備の修繕や販路開拓をしながら模索を続けています。

同社が2022年夏にオープンさせたものづくり体験施設「FUJIHUB(フジハブ)」内には、いっちゃんたまご直営カフェがあります。卵かけごはんやうま味たっぷりの親鳥を使ったメニューは観光客にも人気。そのほかに、ものづくりのワークショップや地元農家、飲食店が集まるマルシェなどを開催し、地域に開かれた交流の場にもなっています。

地元で15年続いた地元の温泉をリニューアルし、2024年4月にオープンしたのが温泉複合施設「いなべ阿下喜ベース」。広々とした休憩スペースを備えた温泉、3種のサウナを楽しめるラウンジ、コンテナ型の宿泊施設など、日帰りでも宿泊でもくつろげる空間となっています。

その中にある食事処として取り上げたいのが「新上木食堂」。元々は名古屋から移住した若い農家と料理人がタッグを組み、地元の商店街で廃業した旅館をリノベーションした食堂でした。それを温泉のリニューアルに合わせて同施設内に移転することになりました。

藤原岳の麓に広がる自社農園「八風農園」の無肥料、無農薬の野菜を中心としたメニューは大人気。取材に訪れたのは平日だったにも関わらず、子ども連れの主婦からスーツ姿のビジネスマンまで、大勢の老若男女でにぎわう様子が伺えました。

こうした新しい取り組みの広がりについて、井上さんは「ずっと地元で愛されてきたコンテンツが、若い人や移住者によってオシャレに再解釈され、魅力的なまちづくりにつながっています」と語ります。

恵まれた自然を堪能できる多彩なアウトドアスポット

豊かな自然に囲まれたいなべ市には、豊富なアウトドア資源を活かした数々のスポットが存在します。藤原岳や竜ヶ岳といった1000m級の山々は年間を通してハイカーが絶えません。西日本屈指のキャンプ場「青川峡キャンピングパーク」はキャンパーから絶大な人気を誇ります。

新しいものだと2023年4月、滋賀県との県境にある鈴鹿国定公園の宇賀渓に、アウトドア複合施設「Nordisk Hygge Circles UGAKEI」がオープン。キャビン棟やグランピングテント、キャンプサイトが充実し、日常から離れてゆったりとくつろげるスポットです。

ペットと一緒にキャンプを楽しむことができるキャンプ施設「やまてらす」も要チェック。ペットがNGというキャンプ場も少なくない中、リードなしで泊まれるドッグラン付きキャンプサイトや電源付きのオートキャンプサイトなどを備えています。

「似たようなアウトドアフィールドなら隣町にだってあります。そんな中で、子連れの家族でも、ペット同伴でも、誰もが自然に触れ合えるスポットが充実しているというのもいなべ市の特徴です」と井上さんは話します。

全てはいなべ市を盛り上げるために

新たなにぎわいを生むスポットが続々と登場し、進化を続けているいなべ市で、現在進行中の地域回遊プロジェクトが「シン・イナベ」。市内のスポットを巡るスタンプラリーのほか、2024年11月に開催される日本最大級の遊びの祭典「FIELDSTYLE」でシン・イナベブースが出展されます。

そして、いよいよほりにし甲子園が開催目前に迫る中、最後までレシピの磨き上げに余念がない様子。「どこでも作って食べられるような、いなべ市らしいカジュアルなメニューを考えています」と、自信ありげな井上さん。さすがはほりにし発祥の地といったところでしょうか。プライドをかけた渾身の一品が東京でお披露目されるのが今から楽しみです。

ご当地ほりにし販売所